写真って見えているものを切り取るものだと思っていたけど、それだけでもないみたいです。
ということに最近気付かされました。
ローカル鉄道写真撮影においては、見えてないものを事前にイメージしておくことが非常に大切です。
このイメージの力の強さを痛感する撮影を経験して感じたことをまとめました。
ローカル鉄道写真の難しさ
先日、ローカル鉄道の撮影に挑戦してみました。
これまでも手持ちで、スナップ的に鉄道を撮ることはありました。
しかし三脚を据えて事前に構図を作り、列車が見えはじめたらシャッターを切り、連写し、通り過ぎるまでボタンを押し続けるという方法で撮ったのは初めてです。
ないものをあるとすることの難しさ
この撮影で痛感したのは、今見えていない「鉄道」を存在するものとしてイメージすることの難しさ。
今フレームの中に見えていないのに、車両が存在している体で脳内にイメージして、絵作りして、作った絵をキープするために三脚をセットし、本番で落ち着いてシャッターを押す。
鉄道写真の経験が少ない私には、興味深くも迷いに満ちた体験でした。
やり直しの機会が少ない
都会の電車であれば10分に1本のペースで通過するので、失敗してもすぐにまたリカバリーの機会がやって来ます。
しかし、ローカル線の場合、やって来るのは良くて1時間に2本程度。
チャンスの少なさが難しさに拍車をかけ、撮影後に消化不良感が残ります..
想定外の写真になってしまった時に、失敗理由を分析し、改善策を自分なりに考えて、再度試してその結果を確認する。
これが撮影上達に有効な方法だと個人的に思っております。
しかしローカル鉄道の場合、次に列車が来るのが1時間後.. だったりして、試してみるチャンスが極端に少ない。
これがつらい。
しかも、いざ本番になると風が変わったり、光が変わったり、雲が出たりして、そこでもまた事前の想定とは変わって来ます。
列車の大きさを把握していない
慣れていないと列車の大きさがよくわかりません。
画面内での列車の占有率が事前想定より大幅に大きくなり過ぎたり、思っていた構図にできないこともあります。
電車なんて普段しょっちゅう目にしていると思うでしょ?
意外と見ていないものなんですよ..
「見る」と「見える」は違うんですよ..
ローカル鉄道写真撮影現場でのタスク
時刻表を読む
時刻表を読み解く力はすごく必要になります!
何時何分にどちらの方角から鉄道が進んでくるのか?
この大事な情報を知るために必要なことは全て時刻表の中に書いてあります。
しかし、時刻表に書いてある「上り」の列車が果たして右から来るのか?それとも左?
みたいなことがいざ現場に行ってみるとわからない!
意外とわからない!
そんな時、便りになるのはGoogleMapです。
通信できない環境の場合もあるから、紙の地図の方が安心か。
とにかく時刻表と地図!
これ、やっぱり必須です。
数字と記号で表現された情報を、3次元に変換して、さらに2次元の写真に落とし込むという..
考えてみれば複雑なことをやってのけるのが鉄道写真撮影なんですね〜。
ロケハン
さて、鉄道写真は大体の撮影エリアに到着したら、どの地点から狙うのか、まずいくつかのポイントを実際に歩いて回って見てみます。
この時、列車が来る方向とともに大事なのが太陽の位置。
小さい駅でも、ポイントを確認しながら回ると結構な距離を歩くので、そこそこ体力は必要です。
イメージ
各撮影地点で列車が来た時の見え方の完成形を想像します。
場所決定
複数あるポイントの中から1箇所「だけ」を選んで、そこを自分の拠点にします。
これも慣れてないとどこがいいかとかよくわからない。
設定
完成形の状態を想像して、カメラの設定を整えます。それは、列車にピントを合わせるのか?
手前の草花にピントを合わせるのか?
みたいなことです。
フレームにインして欲しくない看板やガードレールがある。
消したい。消すためにはアングルをどうするのか?
下からあおる?上から見下ろす?
列車の存在を少し弱めたい。
どうしよう?シャッタースピードを遅くして流し撮りにすれば列車が流れて、印象が薄まるから、流し撮りにしよう。
みたいなことを決めます。
場所選びもポイントですけど、ここも、各人の個性が出るポイントですね。
この、「設定」を決める時に必要で大事なことは、
伝えたいことは何なのか?ということなんだと思います。
列車のカッコよさを伝えたいのか、迫力なのか、可愛さなのか、のどかさなのか、さわやかさなのか、組み合わせの意外さなのか。
列車の存在はむしろ弱めたいのか。
伝えたいことが一番伝わる設定を、現場の状況から選び出せるのが技術力なのかなと思います。
待つ
設定を整えた上で、列車が通過する「そのタイミング」を待ちます。
本番
列車の気配を感じたら、後は押すだけ。
流し撮りなら押しながら振り抜くだけ。
事前の準備に比べると本番でやることは少ないですけど、重要なのは、事前に決めたとおりに行動し抜くことですかね。
ここまで来たら迷いは禁物。
ある意味、ローカル鉄道写真家はアスリートと言える。
ローカル鉄道写真撮影時の注意点
食料と飲料は忘れずに!
今回私は昼食についてはローカル線の始発駅でカツ丼を購入しておいて、糖質もタンパク質も脂質も補給バッチリ!だったのですが、飲料については失敗しました。
とりあえず、500mlのペットボトルの水があればいいだろう♪と気楽に判断して1本だけ携えていったのですが、梅雨明け後の結構暑い日で、撮影準備を始めてすぐに少し頭が痛くなって来ました。
やべえ。
これ、熱中症になるパターン!
もっと水分を補給しなくては!
塩分も補給しなくては!
と思っても、列車が来る時刻が迫っているので現場を離れられない。
さらに飲料を買いたくても販売しているところがない。自販機すらない。
最終的には駅のトイレの水を汲んで凌ぎました。
まあ、でも駅にトイレがあって良かったですよ。
トイレの水といっても便器に流れる水ではないですよ。
トイレの手洗い場の水です♪
本当に、そのまま飲める水が蛇口から潤沢に出てくる日本の水道システムの品質の高さには感謝しかありません。
ということで、水分は、自分で充分と思う量よりも多めを準備しておくことをおすすめいたします。
レンズも三脚も重くてこれ以上重量上げたくないな..と、ついつい携行する水分を減らしがちですが、自分の身は自分で守らねば。
イルカの写真の難しさも鉄道写真に通じる
眼の前にみえていない完成形を想像して絵作りをするタイプの被写体は他にもあります。
例えば、水族館のイルカショー。
イルカがどのくらいの大きさで、スピードで迫ってくるのか、実際に飛んでもらうまで、よくわからない。
イメージの難しさは災害対応にも当てはまる
西日本での豪雨災害、大勢の方が亡くなったり、家屋が流されたり、甚大な被害が出ていて、本当に心が痛みます。
川が氾濫して浸水被害が出た地区のその後の映像を見ると、川の水位も低くなり、東京あたりのそこら辺によくある河川、例えば目黒川、くらいの感じとそんなに変わらないように見える。
きっと大雨が降る前の被害地域の状況も、そんな感じだったのではないか、と勝手に想像しています。
そうだとすると、まさかあの水が溢れて、家の一階が水に浸かり、二階まで上がってきて、駐車場にも水が溢れて、車が浮いて、流れて、建物に激突して、どっちも壊れて.. なんて状況を、事前にイメージできるわけがないと思うのです。
普通の人は、やったことないことを想像できないし、見えないものを想像することもできない。
災害対策の難しさは、見えていないものをイメージすることの難しさに起因すると感じました。
見えないものにリソースを割けるかどうか..
その力を磨けるかどうか。
だけどイメージは人を動かす。
イメージすることは難しい、そしてイメージは強い。
教育にもイメージ力強化が必要なのでは
イメージの重要性を体で実感したローカル鉄道撮影ですが、同時に他の分野にも当てはまることなんだな、と自説ですけど、思い至りました。
災害にも通じる可能性があるならば、もうこれは小学校の義務教育でも、その能力を伸ばす教育を取り入れた方がいいんではないかと思います。
命を守り、表現力を高める力、それはイメージ力。またの名を想像力。そのまたの名が妄想力。
まとめ
鉄道写真は、構図を決めて、三脚をセットしたら後は本体が来た時にシャッターを押すだけだから、待ち時間が長くて暇を持て余すのかな..
と事前に想像していたのですが、現実はかなり違いました!
とにかく、事前準備が8割〜9割の世界ということがわかりました。
そしてイメージ力、妄想力を発達させておくことが重要。
未体験のことを経験するのは楽しいです。
一時期、「何を撮ったらいいかわからない症候群」に苦しんでいたのですが、いつの間にか症状が消えていました。
今思えばあれは、写真を撮る人が陥る「写真うつ」の1つだったのかも。
脱「写真うつ」対策に有効なことの1つが、「いいから撮る」ことかなと思います。
強制的に未体験のジャンルを経験したり、その分野の方法論を体験するのって、固まった視野を広げるのに有効です。
本日もお読みいただきありがとうございます。
また来てくださいね!
スローシャッター使用時にあると便利なもの
昼間にスローシャッターで撮る時はNDフィルター必須ですけど、列車の場合はそんなに強力な減光力は必要なくて、このくらいで充分効果あります。スローにしすぎると列車が消えちゃうので、列車の速度にもよるけど、1/4秒前後で明るさがちょうどよくなるようなフィルターとスピードの組み合わせにできればいいかと思います。
読み終えて、よくよく見たら・・・
どんどん進化していきますね。また写真を撮りたくなるような記事でした。
ありがとうございます!写真、どんどん撮っちゃってください!撮りましょう!