一眼レフやミラーレスなどの大きなカメラとスマホのいちばん大きな違い‥それが「ボケ」だと、写真を始めたばかりの私は、思っていました。
こんにちは、ちゃんまり(@sugar_mariko)です。
2019年くらいからは、スマホでもボケた写真を撮れるようになりましたよね。この頃からスマートフォンの上位機種には、レンズが3つ搭載されるようになりました。複数のレンズと、デジタル画像処理の力を使って、ふんわりとしたボケを作れるようになっています。だから「スマホがあればカメラいらないんじゃない?」という意見も聞かれます。
とはいえ「実際どういった原理で写真がボケるのか?」という基本の考え方を知っている方が、スマホでのボケも上手に作れるようになります。
あと忘れちゃならないのが、ボケを作れるような上位機種スマホって、めちゃくちゃ値段が高いということ。定番の一眼レフやミラーレスを買う方がむしろ安い。非常に強気な価格で販売されています。
なのでボケを活かした写真を撮りたいなら、まずはカメラで勉強するのが、知識の面でも費用の面でもおすすめです。
ということでこの記事では、上手にボケを作りたいカメラ初心者の方向けに、撮影の仕方とボケの生み出す効果について解説しました。
せっかくカメラを買ったのに、どうしてもボケた写真を撮ることができなかった『あの頃の私』に教えてあげたい記事でもあります。
ボケの活用法解説
まずはボケの活用方法を解説します。『ボケ』の役割を知って、上手に使うと「ただボケてる」だけでなく、いろいろなことを表現できるんです。
ボケの役割
ボケには役割があります。ボケの役割を理解せずに、テクニックと機能でボケを作っても、見る人を感動させることはできません。
大きなボケを作って満足していたのですが、そのうち壁にぶつかりました。その理由は、意味や必然性を考えていない写真が伝えられることが少ないからでしょう。
やっぱり何か伝えたいこと、表現したいことがあり、その手段として『ボケ』を活用するという意識を持っていないと、写真に深みが出ません。
意味ある「ボケ」にするために「ボケ」によって表現できることが何なのか?詳しく解説します。その後で、具体的なボケの作り方を解説します。
ボケの役割その1 主役を際立たせる
ボケの代表的な役割は、主役を際立たせることです。手前にいる主役にピントを置き、背景を大きくボカすと、コントラストで主役が浮き上がります。
ふわっとした背景の中、はっきりと見えている主役の存在が際立ち、強調されます。この主役強調効果はわかりやすいです。作例もよく見かけますし、ボケ活用の基本と言えます。
ボケの役割その2 背景を整理する
背景を整理する目的でも、ボケは活用されます。ボケによって、ネガティブな要素を削ることもできるんです。
例えば、こんな状況でボケは活用できます。
- 主役の背後がごちゃごちゃ
- 背景に特に意味がない
- 背景をはっきり見せたくない
背景が理想的な状態でない時や、見せたくないものがある時、大きくボカすことで、背景の印象を弱めることができます。
写真は、見せたくないものを見せなくていいのです。見せたいものだけを見せれば良いのです。
はっきり見せなくない時、自然にナチュラルに視野からはずすために、ボケが活用できます。
見る人は
- ボケている部分は重要でない
- ボケてない部分は重要(ピントが合っている部分は重要)
というメッセージを無意識に受け取ります。
意図的にボカすことで、強弱の関係を作り、より主役に注目してもらいやすくするのです。
ボケの役割その3 やわらかい雰囲気を作る
ふんわりした、柔らかい印象に仕上げたい時にボケを使うと一気に柔らか〜くふんわ〜りして来ます。カメラ・写真の科学的構造的な理由で、奥のものより、手前にあるものの方が大きくボケます。
主役である被写体の手前側の、カメラに近い位置に何かを配置すれば『何か』は大きくボケます。これを『前ボケ』といいます。
前ボケは、後ろボケより大きなボケを作り、写真全体にふんわりとした印象を作ってくれます。
ボケの役割その4 手前の邪魔なものを消す
ボケは手前の邪魔なものを消すこともできます。風景やストリートスナップを撮っていると、写って欲しくないものが画面に入って来がちですが、ボケを使えば画面から消せるんです。
現代社会の情景には、看板、広告、標識など、文字や記号たっぷりの人工物が多く存在してますよね?社会には必要ですが、作品には必要ないものです。こういう邪魔な存在を消すために、ボケは使えます。
手前に『ボケ』を配置して、人工物を見えないようにするのです。なかなか高度で上級なテクニックなのですが、覚えると撮影地の幅がグッと広がります。
ボケを作る撮影テクニック
ボケの役割をざっくりと理解したところで、『ボケ』を作る具体的な撮影技法を身につけていきましょう。
初めに「被写体の背景にボケを作る」方法を解説します。
ボケの作り方その1 被写体にできる限り近づく
ボケを作りたい時にまずやるべきことは、被写体になるべくカメラを近づけることです。この時気を付けねばならないことは「レンズの最短撮影距離」。
レンズにはそれぞれ「これ以上近づくとピントが合わなくなるよ」というポイントがあります。それが「最短撮影距離」なんです。
例をあげます。
下記は安いのに高画質が楽しめることで有名なキヤノンの単焦点レンズ『EF50mm F1.8 STM』です。
このEF50mm F1.8 STMの最短撮影距離は0.35mです。(参考:キヤノン公式 )
最短撮影距離は0.35mが意味することは
「35cm以上近づくとピントが合わない」
ということです。最短撮影距離が意味することは、文字通り「近づくことが許される最短の距離」です。
背景をぼかしたい場合は、被写体に近づくとよいのですが、最短撮影距離以上には近づかないように注意しましょう。
被写体にピントを合わせた上で背景をぼかすには、程よい距離感を保つことが大事です。
ボケの作り方その2 被写体と背景をできる限り遠ざける
被写体と被写体の背景の距離を遠くすればするほど、背景がボケます。背景をぼかしたい時は、なるべく背景が開けている場所で撮るようにしましょう。
すぐ後ろに何かがある、壁がある、みたいな状況ですと背景はほとんどボケません。
ボケの作り方その3 絞り開放で撮る
レンズの絞りを開放にして撮るとボケやすくなります。絞り解放とは、レンズが内蔵している羽をなるべく開くこと、です。
開く=開放。「絞りを開く」とは、F値の数字をなるべく小さくすることでもあります。
先程例にあげたEF50mm F1.8 STMであれば、絞りの最小値はF1.8です。つまりEF50mm F1.8 STMなら、1.8が絞り解放となります。
ボケの作り方その4 望遠で撮る
望遠レンズで撮影するとボケやすくなります。
レンズには広角、標準、望遠の分類があります。手前から遠くまで広い範囲が写るのが広角、遠くのものを引き寄せて狭い範囲が写るのが望遠レンズです。
望遠レンズは、広角レンズに比べてピントが合う範囲が狭いです。ピントが合う範囲が狭いと、わずかな距離の差でピントが合っていない部分の割合が大きくなり、ボケやすくなります。
ボケの作り方その5 フルサイズカメラで撮る
センサーサイズが大きいフルサイズカメラで撮影するとボケやすいです。
『センサー』はデジタルカメラの心臓とも言える重要なパーツですが、センサーサイズが大きい方が被写界深度が浅くなる(=ピントが合っているように見える範囲が狭くなり)ため、ボケやすくなります。
下記は、カメラ種類によるセンサーの大きさの違いをまとめたものです。
【カメラ種類によるセンサーサイズの違い】
スマホカメラ (最小)
↓
コンデジ
↓
マイクロフォーサーズカメラ
↓
APSCカメラ
↓
フルサイズカメラ
↓
中版カメラ(最大)
カメラの種類で比較すると、一番センサーサイズが小さいのがスマホ、一番大きいのが中判カメラです。フルサイズは中判の次にセンサーが大きいですね。
中判カメラのボケはすごいです。ただ、デジタル中判カメラは製品種類が少なく価格も際立って高価。一般人が気軽に手を出せるカメラではないです。
「大きなボケを作りたい」という目的でセンサーサイズの大きいカメラを買うのなら、フルサイズカメラを選ぶのが、賢明な選択でしょう。中古から最新機種まで選べる製品種類が多く、コストパフォーマンスは高いです。
ボケの作り方その6 前ボケを作る撮影テクニック
後ボケが作れるようになったら、次は前ボケを作る練習をしてみましょう。
では前ボケを作るためにやることです。
ボケにする物体にカメラを密着させる
以上です。これだけなんです。簡単ですよね。すぐやってみましょう。
後ボケ、前ボケの両方を操れるようになると、写真の表現の幅がグーっと広がります。ぜひ、身につけてください。
ボケを作りやすい機材
ボケを作るためには、テクニックに加え『ボケを作りやすい機材』を使うことも重要です。テクニックと機材の合わせ技で、より大きなボケが作れるようになります。
明るい単焦点レンズ
ボケを作るためには、明るい単焦点レンズを使いましょう。ボカすためにはF値をなるべく小さくすると良いのですが、レンズによっては「どんなに頑張ってもF値が6.3までしか下がらない」製品があります。
高倍率のズームレンズでは、望遠にズームすると、最小F値が大きくなってしまうんです。「広角側だと最小F値が3.5だったのに、ズームすると6.3になっちゃう!」みたいなこと、よくあります。ズームレンズは高倍率ズーム機能を実現するため、色々無理を重ねているので、仕方がないことではあります。
でも簡単にボケを作りたい場合は、できればズームレンズではなく、単焦点レンズを使うことをおすすめします。ずっと楽にボケを作れます。
単焦点レンズは、ズーム機能を組み込まなくてよいので、レンズ構造に無理がありません。無理がないので画質も上げやすく、比較的手頃な値段で、F値の小さい明るいレンズを作ることができます。
小さいF値のレンズ‥例えばF2.8、F2.0くらいのF値の単焦点レンズであれば、入門者が試しに買うのにうってつけです。手頃な価格のレンズがいろいろ出ています。
F1.8、F1.4となるとズームレンズでは実現不可能なF値です。F1.8、F1.4などの小さなF値のレンズを現実的な価格で手にできるのは、単焦点レンズの醍醐味です。
単焦点レンズ入門者であれば、以下のようなレンズを買っておけばハズレはないでしょう。
下記の中望遠レンズはポートレートを撮る人に絶大な人気を誇る名レンズ。
ズームレンズしか使ったことがない方は、ぜひ単焦点レンズを使ってみてください。世界が変わります。
望遠レンズ
望遠レンズによるボケは、明るい単焦点レンズによるボケとはまた違うボケになります。どのボケが自分は好みなのか、ぜひ実際にご自分で体験して判断してみて欲しいです。
望遠レンズのうち、望遠ズームレンズには、大きく分けて2種類あります。1つはズームすると最小F値が変わるレンズで、もう1つはズームしても最小F値が変わらないレンズです。
ズームしても最小F値が変わらないレンズのことを「通し〇〇のレンズ」なんて言ったりします。「通しF4」みたいに使います。
これは最小F値が「ズームしてもしなくてもF4のレンズ」ということです。
ボケにこだわる人の望遠レンズはできれば、こういった通しで「F4」もしくは通しで「F2.8」のレンズがよいです。具体的には通しF4もしくは通しF2.8の望遠ズームレンズが望ましいです。
F値が変わるレンズよりも大きなボケが作れます。
ただ通しF2.8の望遠ズームレンズとなると、かなり値段が高く(メーカー純正品で25万円くらい)、サイズも大きく、重量は重くと別次元の悩みや問題が出てきます。
心身ともに軽く行きたいなら、通しF4を選ぶのも懸命な選択です。それでも望遠レンズなら充分に大きくボケます。
望遠ズームではなく思い切って、単焦点の望遠レンズを選ぶという手もあります。単焦点の望遠レンズは使いこなすのが難しく、かなりマニアックな選択ではありますが、使いこなせれば、ただものではない、人とは違う作品が撮れることでしょう。
以下のレンズは評判がよい望遠単焦点レンズです。発売から年月が過ぎているため価格も充分に練れていて、買いチャンスとも言えます。
「自分はとんがったことが好き!人と違うとワクワクする!」というタイプの方にはぜひ試して欲しい名レンズです。
マクロレンズ
マクロレンズで撮影した写真です。
ボケを作るためには、マクロレンズを使うのも手です。マクロレンズは、被写体を等倍(実物と同じ大きさ)で撮影できるレンズで、ボカシ作りも得意です。
被写体を大きく写せるのがマクロレンズなのですが、ピントが合う幅が非常に狭いため、ピンボケには注意が必要です。
ピンボケしやすいということは、意図的なボケも作りやすいということ。ピントとボケの対比が美しい名レンズがマクロレンズのジャンルには揃っています。
特に評判が良いのが下記のレンズです。
ぜひ、一歩進んだボケ写真を楽しみたい方は、実際に使ってそのボケ味を楽しんでみてください。
ボケを作りにくい機材
ボケを作りやすい機材があれば、ボケを作りにくい機材もあります。
というのも写真は常にボケていればいいわけではなく、できるだけ広域に画面全体にピントが合って欲しい写真もあります。そういう場面で使用される機材は、ピントが合いやすくボケが作りにくい機材いうことになります。
ここまで読んできてくれた方は、もうどんな機材がボケにくいのか薄々感づいておられると思いますが、復習も兼ねて「ボケにくい機材」を解説します。
センサーサイズの小さいカメラ
スマホや、コンデジなどのセンサーサイズが小さいカメラは、ボケにくいです。ボケにくいということは、失敗も少ないということ。
スマホ・コンデジは、写真撮影の知識がない方もガンガン使いますので、失敗しにくいように設計されているんですよね。全域にピントが来て欲しい写真に使うには、ぴったりの機材です。
F値を小さくできないレンズ
F値を小さくできないレンズは、大きなボケは作りにくいです。例えばキットレンズなどの軽くて小さいズームレンズは、望遠側にした時にF値を小さくしようとしても、限界に突き当たります。どうがんばっても6.3以下にならないこともあります。それはレンズの構造的な問題です。
F値を小さくできないレンズを使っていて、あまりボケない理由は、撮影者の腕だけではありません。機材にも原因があります。
広角レンズ
広角レンズは、全域にピントが合いやすく、ボケにくいレンズです。広角レンズは被写界深度が深いため、手前から奥までピントが合いやすい特徴を持っています。
逆に考えると、広角レンズでのボケは作りにくいと言えます。だいたい焦点距離24mm以下の広角レンズでボケを作ることは、不可能ではないですが、かなり難しいことであると覚えておきましょう。
まとめとボケを活用するために大切なこと
ここまで、ボケの役割と撮影テクニックについて解説してきました。
ボケって、すごく派手というか印象の強い結果が出るので、ついつい夢中になってその効果に溺れてしまうんですよね。
初心者でもセンスのある人は溺れないんですが、私はアホなので溺れました。「ボケればいいんだボケれば!」と本気で思っていて、構図やレイアウトに全然気を使わない写真を撮っていました‥
ボケというのは技術の一つでしかないので、それ自体が目的になるとそこで終了です。「見てみて、こんなにボケてるでしょ!?」って自分で満足して人に写真を見せても「あーほんとだ、すごいボケてるね」で終わりです。
ボケは「表現手段の一つ」と理解し、他の技術とも組み合わせましょう。見る人に、自分の感じたこと、伝えたいことを伝えるため、意図的にボケを使いなせるようになれば、ステップアップしています。
楽しみながら工夫できると最高です。まずは自分の力で作ったボケを味わい、うっとりしましょう。写真を撮る原動力は撮影者のトキメキです。トキメキを増やして、今より一歩先にたどり着きたいですね。