2022年に、私が読んで高評価した本を選んだら15冊ありました。この2022ベスト本15冊はこちらの記事 にまとめています。
15冊の分野が多岐に渡るため、近いものはまとめ、全部で5つのジャンルに分類しました。本記事は5ジャンルのうちの1つ、社会派、オピニオン系の本のご紹介です。4冊あります。
朝礼のネタにしたくなるような、SNSで内容をシェアしたくなるような、社交場面での雑談に困らなくなる本たちです。
気になったかたはぜひ読んでみてください。
無理ゲー社会
『無理ゲー社会』橘玲著
橘玲さんと言えば、データとエビデンスに基づき、現代社会で起きていることの理由を論理的に語る、まさに社会派の作家。
私情を挟まない文体でちょっと冷たくも感じられるのですが、世の中の動きやこれから社会が向かう姿をフラットに予想されているのがとても興味深いんです。だから新刊が出たら読むようにしています。
無理ゲー社会が意味するところは、非モテの男性にとって世の中は無理ゲー(攻略がほぼ無理なゲーム)になるということ。
なぜか?
その理由は、世界が「自分らしく生きる」ことをよしとするリベラルな社会に向かっているため。この流れは誰にも止めることができません。
一見、男子にとって絶望的なことしか書かれていないように見えますが、未来に希望が持てる新しい概念についても語られます。それは「COST」という考え方。COSTとは、すべての私有財産に定率の税をかけることを意味します。
COSTが導入されると「所有」の価値がなくなり、人はレンタルやシェアを選ぶようになります。その結果、社会の富が増え社会全体の幸福が増えるのでは、と考えられています。
資本主義の限界と弊害を実感せずにいられない昨今ですが、COSTには市場原理を徹底することで自由な社会を維持したままコミュニズムを実現する可能性があるのです。
『無理ゲー社会』においては、ディストピアとユートピアの両方が語られるんですねえ‥
すばらしいバランス感覚。
世界がリベラル化すると、非モテの男性にとって社会がディストピア化するのはなぜなのか?という、男性にとって切実な問題の詳細は、ぜひ本書を読んでみて欲しいところです。
22世紀の民主主義
『22世紀の民主主義』成田悠輔著
イェール大学助教授で、AIやデータ解析のエキスパートである成田悠輔さん、私大好きなんですよね。2022年大ブレイクして、テレビ各局のワイドショーでも引っ張りだこになっちゃいましたね。
自由奔放な発言が小気味よいです。日本の産業界、放送界、政界におもねる必要がない立場にあるからでしょうか。若いのに醒めているというか達観している佇まいで、低音のやわらかいイケボ(イケてるボイス)で話し声が心地いいことも彼の武器ですよね。
それで『22世紀の民主主義』なんですが、非常に痛快でした。
最初の方で、もはや選挙では民意を反映した暮らしやすい社会を実現するのは無理であると言ってます。
ではどんな政治の形であればよいのか?その答えが「アルゴリズム」です。
現在の民主主義の基本システムである「選挙」で選ばれた政治家による政治では、国民の意見をほぼ反映できていない。
替わりとなるのは、民意データを集め、集めたデータをアルゴリズムにかけ、アルゴリズムに「政策」という返り値を吐き出させ、それをもとに社会を運営していくこと。
現代のテクノロジーなら実現可能です。
選良(議員のこと)ではなく、アルゴリズムに政策立案、政策実行をまかせた方がよいのではないか?という提案がされているのです、『22世紀の民主主義』では。
めっちゃ面白いですね〜
思えば、私も20歳で選挙権を得てから1回も欠かさずに選挙に行ってきたのに、全く思ったような社会にならない。もはや選挙で世界を変えることはできないんだな。世界が変わらないなら別の手段で、自力で、なんとかするしかないんだな‥とずっと思ってはいたのです。
AIとアルゴリズムで、政治の解決策を出してくるとはね‥びっくり。
でもね、成田さんがこれだけブレイクしたということは、今の選挙制度、今の日本の政治に絶望している人がたくさんいることの現れだと思うのです。
『22世紀の民主主義』おすすめですよ。文章にもどこか突き放したような飄々とした空気感があり、好感が持てます。ぜひお読みになってください。
ファクトフルネス
『ファクトフルネス』ハンス・ロリング著
『ファクトフルネス』は1〜2年前に流行った本ですが、私は2022年に読みました。でも、読むのに遅すぎることはない本でした。なので、まだ読んでいない方には今からでもぜひ読んで欲しいです。
なぜなら、読むと勇気が出る本だからです。なんとなく嬉しく、なんとなく楽観的な気分になる本なのです。
『ファクトフルネス』を読むと、世の中は確実に良い方に変化していることがわかります。データで見れば、社会が以前より良くなっていることは明らか。
思い込みや誘導により「昔はよかった」と言ったり思わされたりしがちです。が、しっかりしたエビデンスや証拠を調べてみれば、その判断は「気のせい」で、事実にもとづいてはいないのだな‥ということが、『ファクトフルネス』を読めばわかります。
世の中、悪いニュースの方が広まりやすいですし、人はネガティブなことばかりを考えがちなのです。
しかし、実際に起きていることは違います。
私たちは、ちょっとしたことで落ち込んだり悩んだり、悲観的になりがちです。それは脳のクセなんです。しかし悲観的な予測のほとんどは実際には起こりません。ほぼ全て脳が作り出した幻想です。
『ファクトフルネス』を読んで、たくさん寝て、好きなものを食べて、正気に帰りましょう。
良本です。
バナナの魅力を100文字で伝えてください
『バナナの魅力を100文字で伝えてください』柿内尚文著
すみません。『バナナの魅力を100文字で伝えてください』は社会派というよりは、ノウハウ系の本でした‥。しかしとてもいい本でしたので、一緒に紹介させてください。
著者の柿内尚文さんは、売れっ子ノンフィクション本編集者です。有名な本だと「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」があります。要は売れそうな本の企画を考えたり、作った本の売り方を考えたりといった仕事のエキスパートというわけです。
『バナナの魅力を100文字で伝えてください』にはサブタイトルがあって、それが「誰でも身につく36の伝わる法則」。
うむ、この短い文章の中にも、私たちがついつい引きつけられてしまうコピーライティングのテクニックがつめこまれています。「誰でも」というワードで敷居を低くし、「36」と理解しやすい「数字」を入れて、ハッとさせる、などなそ。
本のタイトルは「伝えてください」なんですが、中身で語られているのは「伝わる」法則です。伝えるではなく、伝わる。ここがポイントです。なぜなら、メッセージというものは、伝えたからといって伝わっているとは限らないからです。
「これ前にも言ったよね⁉聞いてなかったの⁉」と言って相手を責める。こういう経験ありませんか?これはまさに、「伝えたのに伝わってない」状態の典型ですね。
しかし、ヒット本続出の名編集者ともなると、伝えたいことが自然に伝わるテクニック・ノウハウをたくさん持っているわけです。
もうこれ、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』読むしかないでしょ。
まとめ・2022年読んでよかったベスト本その3・社会派オピニオン系4選
2022年に読んだ社会派、オピニオン系のベスト本は以下の4冊。みなさまもぜひに。