こんにちは、フォトグラファーのちゃんまりです。
私は写真を撮っているのですが、構図づくりには常に悩んでいます。そんな折にこの本『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』に出会って、飛びつきました。
「絵画の見方と写真の見方」にはきっと共通点があるはずだと考えたからです。絵の見方がわかれば、きっと写真を撮る技術の向上にもつながるだろう‥と期待して、ワクワクしながら読むことにしました。
結論、『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』は、期待以上のすごい本でした。これは、ビジュアル表現に携わる人全てに、強くおすすめできる内容です。
なぜか?
『絵を見る技術・名画の構造を読み解く』を一言で表現すると、
「二次元での視覚表現の肝が判明する本」
だからです。
ちょっとややこしいか‥
もっとざっくり言うと、
「構図のナゾがわかる本」
なんです!
とにかく私は、書評でビビビと来て読み始め、読み進むうちに目からウロコが落ちまくりました。この内容、私一人の書棚に閉じ込めておくにはもったいない。ぜひ、私と同じように表現に悩んでいる方に、この情報をシェアしたいです。
ビジュアルでの表現を理解し、創作のキーとなる技術の数々、ぜひ触れてみてください。
『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』は、以下のような人に強くおすすめします。
- 写真を撮ってるけど、もっと上手に構図作りしたい
- 絵を描いてるけど、構図が上手く作れない
- 美術館に行っても、絵をどう見ていいかわからない
- 自分は感性派ではなく論理派である
- ビジネスにアートの発想を取り入れたい
- いい絵、いい写真とは何か知りたい
- 自分自身に根ざしたオリジナルの表現をしたい
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『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』要約
『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』通して読むと、以下のような知見を学ぶことができます。
- 1章:絵の主役の見つけ方
- 2章:目の動かし方
- 3章:バランスの良さとは何か
- 4章:色の働き
- 5章:各要素を絵の中にどう配分するか
- 6章:表面的な特徴と構造を分けて考える
全て読めば最終的に
「自分の感性がとういうものか具体的に把握できる」
ようになるのです。
センスを論理で説明できるようになり、自分だけの絵の見方ができるようになります。
旅をする時、山を登る時に全く丸腰で挑む人はいないですよね?地図とコンパスを手に目的地を目指すはずです。
絵を見る時も同じ様に考えましょう。登山家にとってのコンパスとしての働きを、『絵を見る技術・名画の構造を読み解く』は担ってくれることでしょう。
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『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』レビュー
それでは、『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』をレビューしてみます。1分程度で読み終わるように書きましたので、ささっと読んでみてください。
WEB時代の読書に慣れた人にも読みやすいように作られた本
全体的にわかりやすくシンプルな文章で、読みやすいです。読みやすさの大きな理由が、フォントの大きさ、行間、適切な段落分けなど「本文の見た目」にもあります。読んでいてストレスがかからないんです。これ、本を読む上で重要なことですよ。いくらいい内容でも、フォントが小さすぎたら絶対的に読む気をなくしますからね‥
全体的に配慮が行き届いていて、この編集者はなかなかの力量だと感じました。
本文内での重要ポイントは「太字」になっています。これはありがたいです。まるでブログのようですね。
また、冒頭で全体の構成を解説、はじめに結論を述べてから各章で詳しい解説を展開して行きます。日々、ブログやSNSなど、洪水のようなWEB文書にさらされている我々にとって、これはありがたいです。
これらの面を見てもビジュアルでのわかりやすさ、読者の層、トレンドを意識した本作りをしているとわかります。
著者の語り口が魅力的
「この絵はあまり好きでない」
「ダビンチは自分の考えを人に押し付け、融通が効かないところがある」
などなど、専門家なのにとりすましてなく、率直な意見を言ってくれるので、痛快です。
また、こちらのとまどいを予想し寄り添い、理解の進捗に合せて新しい情報を提示してくれるのも学習者としては安心できます。
学生時代、雑談の多い先生の授業の方がなぜか記憶に残っていませんか?時々はさまれる著者の率直な意見が「先生の雑談」の役割をして、解説の内容がしっかり頭に残ります。
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『絵を見る技術・名画の構造を読み解く』付箋ポイント
この本は全体に重要ポイントがちりばめられていて、無駄なページはないと思うのですが、中でも私が「これは忘れちゃなんねえ」と思わず付箋したポイントをご紹介しましょう。
観察だけでわかることがたくさんある
絵を読み解くためには「観察」が大事です。まずはじっくり、落ち着いて時間をかけて観察することから始まります。ただし漫然と好きに見ているだけでは何百回見ても洞察は得られないので、ポイントを押さえて観察する必要があります。
ポイントを押さえた観察法とは
常に問いを立てながら観察する
ことです。
これはつまり、「why」や「what」を使うということであろう、と私は解釈しました。
「なぜこの場所にこの要素があるのか?」
「なぜこの色なのか?」
「この絵が書かれた時代背景は何だろう?」
といった感じで、作者の意図や、作者の立場に思いをはせながら見ること、そこから伝わることはたくさんある、ということなんです。
問いがスキーム(見るための技術)になる
ということです。
絵を見るために必要なスキーム
絵を見るために必要なスキームは、画面を上下左右端までまんべんなく見ることです。
画面を上下左右端までまんべんなく見て、造形的な要素を読み取りましょう。
造形的な要素とは
- 輪郭線あるなし
- 目立つ色
- 目立つ形
- 目立つ線
- 目立つ要素の配置、構造
の5つです。
名画はなぜバランスを取るのか
名画がなぜバランスを取るのか、学術的にははっきりしたことはわかっていないそうです。
ただ、著者は、心理学者アルンハイムの言葉が気に入っているということで、参考に紹介しています。
「世の中でバランスが取れている状態は一瞬、もしくは部分的。」
「世界はつねに有為転変している」
「芸術は、バランスが取れた一瞬の理想的な瞬間を絵の中に組織化しようとする試み」
そ、そうかもしれないですね。
いい写真、いい絵というのは、「バランスが取れた一瞬の理想的な瞬間」を二次元に閉じ込めた表現なんですねーーー!
ほんとうに目からウロコです。
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影の色を見る
影の色まで見極められるようになったら上級者です。
言うなれば、ハイライトとシャドウの扱いに作家の個性と意図が出ます。
例えば、ダビンチは絶対に、髪や肌の色から飛躍した色を影に使いませんでした。輪郭線も使わず微細なグラデーションで表現します。余談ですが、自分の表現が絶対と信じて他人をこきおろし、融通が利かない人柄です。
ルノワールは対照的に、裸婦の肌の影色にうっすら緑と青を混ぜました。このため、当時は「皮膚病」とディスられたそうです。
ただ緑や青を使うのはルノワールのオリジナルではなく、名画の歴史上ちょいちょい使われた伝統的な手法でもあります。
このように、影の色の選び方も作家表現の1つなのです。
個人的に、ちょうど見て来たばかりの写真展が「青い影」というタイトルのもので
「絵画も写真も共通してる!」と嬉しくなりました。
今日は丸の内の富士フイルムImaging Plazaで開催中の内田ユキオさんの写真展を見てきました。
テーマはハワイで撮影した光と影。
「影が青い」
という感覚にインスパイアされた実験的な内容を含む作品群。不思議だが、確かに影は青く見える時がある。 pic.twitter.com/efNq7CibZF
— ちゃんまり@フォトグラファー&ブロガー&ライター (@sugar_mariko) November 25, 2019
写真を仕上げる時にも
「影を何色に寄せるか」
「ハイライトをどの程度の明るさにするか」
「ハイライトに色をのせるか」
なども考えていくと表現の幅が広がり、さらに楽しくなりそうです。
『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』実践のすすめ
読み終わったら、本で学んだ知見を応用し、実際に名画を見てその意図するところを読み解いてみましょう。
本の最後に練習問題が出ているのですが、この通りに実践すればいいと思います。
簡単に準備できるので、紹介されている読み解きの手順を書いておきます。
- 好きな絵を3枚選ぶ
- 3枚の共通点を言葉にする
- 私は「◯◯◯◯、△△△△△、□□□□□」な特徴がある絵が好きです。そういう絵にグッときます、惹かれます、といった感じで自分の好みを説明する
絵だけでなく、写真でも応用できそうですね。
この手法をベースとして実践を続け、名画を言葉にする習慣をつけると、自分の表現力、表現を理解する力がついていくのではないでしょうか。
写真を撮っていて「撮りたいものがわからない」症候群に陥ること、多いです。そんな時の処方箋として、非常に有効だと思います。
1人でやるだけでなく、何人かで集まってグループワークするのも面白そうですね。
『絵を見る技術・名画の構造を読み解く』おすすめな人
冒頭でも、おすすめな人をリストアップしましたが、もう一度お伝えしますね。
『絵を見る技術・名画の構造を読み解く』は、以下のような人に強くおすすめします。
- 写真を撮ってるけど、もっと上手に構図作りしたい
- 絵を描いてるけど、構図が上手く作れない
- 美術館に行っても、絵をどう見ていいかわからない
- 自分は感性派ではなく論理派である
- ビジネスにアートの発想を取り入れたい
- いい絵、いい写真とは何か知りたい
- 自分自身に根ざしたオリジナルの表現をしたい
私もしばらくしたらまた読み返し、繰り返し読んで、絵を見る技術を完全に自分のものとしたいと思います。
関連書籍
『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』と併せて読みたい書籍をご紹介します。
『観察力を磨く 名画読解』です。
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エイミー・E・ハーマン (著), 岡本 由香子 (翻訳)
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